高精度第一原理熱力学計算手法の開発¶
材料科学においては,結晶構造,合金構造,欠陥構造といった原子構造を理解することが重要となります.また,実際に材料を開発する際,どのような温度,圧力,組成において熱処理をすればよいかという情報,つまり状態図(相図)が必要となります.状態図を調べる手段として,従来は電子分光,粒子線回折,熱分析などの実験手段が用いられてきました.これらの実験に加えて,近年では量子力学計算と統計力学的手法を組み合わせた第一原理熱力学計算により,未知な複雑系での階層構造や状態図を予測できるようになってきています.従来の実験的情報と第一原理熱力学計算による計算的情報を組み合わせることにより,合理的・効率的な材料開発,情報の正確さの向上が期待されています.
構造探索や状態図計算を行う際には,原子配置によるエネルギーを評価する必要があります.第一原理計算のみでは,非常に時間が掛かるため,すべての原子配置におけるエネルギーを評価することができません.よって小さな単位胞の規則構造において,第一原理計算により高精度のエネルギー計算を行い,クラスター展開法とモンテカルロ法などの統計熱力学的な手法を組み合わせることにより,任意の原子配列のエネルギーを計算し,構造探索・状態図計算を行います.
クラスター展開法に基づいた効率的基底状態探索方法¶
A. Seko, K. Shitara and I. Tanaka, Phys. Rev. B 90, 174104 (2014). arXiv:1407.1734
クラスター展開法における長距離相互作用の評価手法¶
A. Seko and I. Tanaka, Phys. Rev. B 91, 024106 (2015). arXiv:1408.6875
A. Seko and I. Tanaka, J. Phys.: Condens. Matter 26 115403 (2014). arXiv:1309.2516
クラスター展開法における構造選択手法および誤差評価手法¶
A. Seko and I. Tanaka, Phys. Rev. B 83, 224111 (2011).
A. Seko, J. Am. Ceram. Soc. 93, 1201 (2010) (feature article).
A. Seko, Y. Koyama and I. Tanaka, Phys. Rev. B 80, 165122 (2009). (Editor's suggestion)